スプリント・メモ (スプリントレースに対する基本的考え)
(日本男子唯一の世界選手権スプリントファイナリストである
山口大助選手へのヒアリングより)
(2006年6月) (編集:円井)
[レース2ヶ月前からの準備]
・今後2ヶ月間でのフィジカルの向上は考えないほうが良い。
・向上が期待できるのは「キレ」「動き」「動作」「手続き」といった部分。
・フィジカルの向上は期待しないでも、
「キレ」「動き」のため、筋肉・神経に刺激は入れる。
下りでスピードを上げたり、「30秒ダッシュ+2分半レスト」など。
これはあくまで乳酸をためないで、筋肉にハイスピードの刺激を
あたえる目的であることを認識する。
・関節や筋肉の可動域を広げ、「キレ」「動き」を向上。
・1日2レースのための耐乳酸性の体を作るため、
「70秒ダッシュ+15秒レスト」などが考えられる。
レースに疲れが残らない時期に行う。
・怪我をしないこと。
[スプリントの走り方・スタイル]
・世界トップ選手の動きは2種類しかない。
「すべてハイスピード」か「止まってその後トップスピード(Stop&Go)」か。
「すべてハイスピード」は一部のトップ選手しかできない。
ほとんどの選手は「Stop&Goスタイル」である。
(※大助さんも最初はStop&Goができなかったが、
2004年WOCでトロイデハースの動きを目の当たりにして
やっとできるようになった、とのこと。)
・パンチ(その瞬間に次のレグに向かって整置)
→次のレグのプラン(2〜5秒立ち止まる:ここで勝負が決まる)
(※プランができている場合でも立ち止まる
頭にイメージを叩き込むため。)
→その後次のコントロールまで減速することなく
トップスピードで到達する(減速するプランではダメ)
(※コントロールで止まるのに苦労するくらいの
ハイスピードで突っ込む。)
・スピードでは外国人に勝てない。
(※多くの日本人選手において。
大助さん程度であれば、それなりに渡り合える。)
「読図+減速しない」方法で活路を見出す。
[後続選手の追走について]
・1分後の選手を待って、追走して予選通過を狙うことは
考えない方が良い。
(※今回ボーダーはトップから1分半ほどと予想される。
中堅選手の1分後では通過できない。)
トップ選手のスピードには追走できない。
前半から飛ばす。
[ルート取り]
・プランで最重要視するのは、よりシンプルなルート。
これはイメージをより簡単に叩き込め、
技術的に減速しなくてすむから。
その次に同じような難易度のルートがあったら、
より滑らかなルートをとる。
(※直角や鋭角に曲がるルートは極力選ばない。
道が曲がっている分には仕方ない。)
[デフ・ポスト番号の確認]
・デフはまずスタートでもらったらすぐ確認する。
そこで場所として危なそうなコントロールはチェックしておく。
(※世界選手権では前日までに全コントロールが発表されるので、
その段階でもある程度どのようなコントロールが危ないかを考えておく。)
・1番はコントロール位置、番号ともチェックしておくが、
あとはほとんど見ない。
基本的には地図読み重視。
ただし、アタックからのイメージが少し合わないときなどは、
その場で番号を確認。
[スプリントに向けた練習]
・パンチの練習をする。
1秒の差がレース全体で20秒の差になる。
パンチした瞬間に整置する必要がある。
ユニットを借りて練習するのも良い。
・過去に大助さんが走ったコースと同じコースを走り、
ラップを比較する。
また、自分でも走りなおして、
「動き(手続き)」の部分でタイム短縮方法を考える。
(※大助さんは、PWTの昭和記念公園のコースを
何度も走っていた、とのこと。)