長距離選手とオリエンティアの違い


吉田 勉










さて、トラックと不整地走の違いですが、これはおおいにあって、その観点からいくと長距離選手をOLの選手にしても、短期的には山では絶対に遅いと思われます。(技術が同等としても)。なぜかをちょっと書いてみます。

長距離選手:
平らな地面を早く走ることに特化している。−筋力的には限られた筋力を常に使い続ける。−限られた筋力の持久力(スピードを考えれば最大筋力・パワー)が強化されている。だから想定外の路面の状況に対応できない。(ちょっとひっかかるとこけます。)

OL選手:
さまざまに変化する路面を走ることに特化している。さまざまな筋を状況に応じて使い分けている。−たくさんの筋を使える。ただし、おなじ筋を長く強く使うことの練習は不足している。

ということで、ボディコンタクトにも対応する中距離選手や自衛隊員のほうがOLには向いていると思っています。

田島先生と話していて、長距離合宿でクロスカントリーをやると、疲労回復となるという話がありましたが、かれらは気分転換でやるので、クロスカントリーでは負荷が弱くなり、もさまざまな筋を交代で使うことになるので、筋には軽い運動となって疲労を回復するのだと思います。OL選手は常にそういう状態で走っているので、山ではあまり疲れないけど、おなじ筋をずっと使い続ける、ロードでは非常に筋がはってしまうということにもなると思われます。

ただし、岩の多いテレインなど経験が少ないところでは、筋肉のほうが身構えてしまって、常に過度の収縮状態になって山でかえってつかれてしまうということになると思います。僕らが北欧で走ると疲れてしまうのはそのせいで、絶対的な筋力差ではないと思います。北欧に長期留学した方に聞いてみたいのですが、テレインに走りなれると急に疲れなくなり、多くの練習が可能になるのではないかと思います。

そういった意味では、トレキャンで初めての足場に出会ってしまうと、そこで疲れを蓄積させて、コンディションを悪くすることが考えられますね。だから、トレキャンで練習するよりはぶっつけ本番のほうが成績がよかったりして。(たぶんに経験がはいっていますが。)対策としては、大会前でないときに現地をはしることが必要で、それもオリエンテーリング技術だけでなく、その地面をどれだけリラックスして走れるかという点にも注意を向けたほうがいいかと思います。もうひとつはトレキャンでは疲労回復に十分注意を向ける必要があるということです。

いま、考えている(すぐかわるかもしれませんが)OL選手に陸上トレーニングをする意味ですが、本当は山でスピードを変化させて走るというのが理想だけれどもその機会がないので、強度の強いトレーニングを陸上でさせて基本の筋力を鍛え、その延長でレースや合宿で他の筋肉のレベルを上げるということがベストかなということです。ロードでゆっくりとしたジョグは時間の無駄じゃないかと思っております(これについては、故障の増悪を招くという理由もあるのですが)。

蛇足ですが、テーピングについてですが、捻挫しないためには2つの方法があります。普通はその力に負けないよう固定すること(テーピングで固めるのがこれ)ですが、もうひとつは、ストレスがかからないようにうまく体を逃がすことです。アメリカンフットボール選手の足首・バレー選手の指などどうしてもとめなけりゃいけない人にはテーピング絶対です。ところがサッカーなどはコンタクトは体を流して避ければいいので、足首を固定することはその能力を制限するのでかえって危険です。

オリエンテーリング選手は変化する地面に対応することを利点としてもっていますので、それを伸ばしたほうが競技力のアップにつながるし、怪我の危険もへると考えているわけです。

私の考えは症例を見ることで逐次変化していきますので、5年前とはまったく違ったことを言っていますし、1ヶ月後には違うことを言っているかもしれません。(昔はテーピングやストレッチ至上主義でしたが、あとトレーニングといえばLSD)もちろん、話す相手によっても違うことを言いますので、本当はあまり文章にするのは不得意です。年々ましなことを言えるようになっているとは思いますが。
 


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