和泉 憲昌

中距離陸上選手
自衛隊体育学校教官

1996年 日本学生選手権 800m 優勝
1998年 日本選手権 800m 6位

400m ベスト 49''05
800m ベスト 1'49''53
1500m ベスト 3'48''08
5000m ベスト 14'45''6
和泉憲昌選手のホーム ページより)





質問1
いままで最もトレーニングをしていた時期(または、最も成績の良かった 時期)のトレーニング量、またその内容を教えて頂けますか?(距離、時間、年間計画、週の典型的なメニューなど)


最もトレーニングをしていた時期は、実業団選手としてフルタイムでアスリートをしていました。練習時間は、まるまる1日あり、午前中に主練習、午後は、 ジョッグやクロカンなどの少し強度を落としたロングの練習でした。種目が800mなので、シーズン中の主練習は、1000mまでの距離で、レペティショ ン、インターバル、ペース走といった内容でした。

レペではレースペースまたは、レースより速いペースでやってました。

インターバルは1000m×5などのように同じ距離を何本か走るよりも、400m+300m+200mを3セットなどのように距離と設定タイムを変化させ て、スピードの変化の多い800mをイメージした練習でした。

ペース走は短いところでは、1000mを2分30秒(1500mを3分45秒のペース)、長い距離では、3000m〜8000mでした。タイムは3分〜3 分20秒/kmくらいです。1500mのレースにも出ることがあるので、1000mはよくやりました。

年間計画は、選手が決めるのではなくコーチが決めていましたが、だいたい11月からシーズンオフに入り、スピードを落とし、少し長い距離を走ります。12 月には5000mで大学記録会に出るなどして、持久力の評価をします。

1月から3月までは、沖縄、奄美大島、宮崎でチーム合宿、実業団合宿、全日本合宿などがあります。特に印象に残っている練習は、ゴルフ場の起伏のあるコー スを利用したインターバルや、400m(64”)×5+8000m(3’15”)+400m(60”)×5という有酸素系と無酸素系を混ぜた練習でした。

3月後半からスピードを上げた練習に移行し、4月からはシーズン。6月までは試合が毎週のようにあり、練習量は少なく、スピード重視の練習でした。

6月後半から8月前半までは、実業団のヨーロッパ遠征で、移動が多く、練習は、ジョッグが中心で、たまにペース走やインターバルを入れるくらいでした。試 合での強度が高いので、普段は休養に当てるような感じでした。

8月は実業団の合宿でスピードを少し落として量がありました。

9月から10月までは、後半シーズンが始まり、4月から6月までと同様、スピード重視の練習でした。

外での合宿が多かったのですが、普段の週間計画における主練習は、月曜日がサーキットトレーニングとペース走、火曜がトラック走、水曜はジョッグ、木曜は サーキットとペース走、金曜、土曜がトラック走、日曜は休養というリズムでした。全身の筋肉に刺激を入れるサーキットトレーニングを週2回やっていたのが 特徴だと思います。

5000mのベスト(14分45秒6)を出したときには、フルタイムアスリートではなかったのですが、よく走れていました。そのときによくやったメニュー は60分の変化走やビルドアップ走でした。トラックが近所になかったので、自衛隊の基地の外周を使って週2〜3回はこのメニューをしていました。

変化走は60分間で、5分ジョッグ、5分ダッシュ、10分ジョッグ、10分ダッシュ、15分ダッシュ、15分ダッシュという変化をつけたものです。ダッ シュは、ずっとダッシュです。最後の15分は5000mのペースよりも遅くなりますが、できる限りの全力で走りました。有酸素的練習ですが、無酸素的な要 素も含まれています。60分は長いですが、ジョッグが休憩になっているので、意外と60分経つのが早く感じます。起伏のある場所を使えば、オリエンテーリ ングの選手にも使える練習になるのではないでしょうか。




質問2
競技以外で忙しい日々において、トレーニング時間を確保し、競技パ フォーマンスを維持する上で、工夫した点がありましたら、教えてください。


一人だと仕事が終わった後は、外は真っ暗で、なかなかモチベーションが上がりません。そのため自分のクラブチームの練習会(毎週水曜、織田フィールド)に 行って、人と走ることによってやる気を高めています。

時間のある時には、自分の走りに結びつくような本(トレーニングや生理学など)を読んで、少ない時間でできるようなトレーニングを作れなかなぁ?と考えて います。

また、できるだけレースに参加し、いつものメンバーにあって、いつものメンバーとレースをすることでやる気を高めています。

最近は、気持ちが乗らないときは、練習をしないようにしています。中途半端な気持ちで練習をしていると、ケガをしてしまうので、それならば、やらないとい う方針です。




質問3
現在の日本オリエンテーリング界のトップ選手についての印象をお聞かせ ください。(フィジカル面、競技への取り組み方、意識など)


フィジカル面
オーリンゲンのビデオを見ただけなのですが、外国のトップ選手をみると、日本人との体力面の違いは、大きいなぁと思いました。ナビゲーション能力よりも走 力を中心とした体力面での差が、国際大会での差になるように見えました。日本のトップ選手については、さらなる走力アップが必要だと思いました。

千葉の大会で、オリエンテーリング選手は、山を下る速さは、本当に速いという印象を持ちましたが、外国選手は更に速いということになりますね。


取り組み方、意識など
陸上の全日本の合宿だと、かなりピリピリした雰囲気があるのですが、オリエンテーリングは、基本的にメニューを一人ずつこなしていくためか、争うという雰 囲気はなく、和やかな雰囲気だなぁと思いました。

陸上では、「俺が」というような選手もいて、それぞれが少し自己中心なのですが、オリエンテーリングの選手は、みんなのことを考える優しい選手が多いよう に見えます。もう少し「俺が」というようなものがあってもいいのかなぁと思いました。競技なので、競技中は自己中心。ある程度の自己中心は仕方ないのか なぁとずっと思っています。

逆に言うと、オリエンテーリングの選手は、日常とレースの切り替えが上手なのかもしれません。言い換えれば、陸上選手は不器用で、日常とレースの切り替え が下手。理想は、しっかり切り替えられる選手だと思います。

オリエンテーリングの選手は、フルタイムで競技をしている人はいないので、その点、競技への取り組み方は、フルタイムの陸上選手より、目標や目的意識を しっかり持ってやっているように見えます。フルタイムの選手はコーチの立てた練習をするという、受け身な選手が多いです。陸上でもパートタイムで行ってい る選手の方がよく考えて練習しています。




質問4
2005年、愛知にて、世界オリエンテーリング選手権が開催されます。 世界と戦う日本選手にむけて、何かメッセージやアドバイスがあればぜひともお願いします。


本番まで、ケガをせずに過ごすことがもっとも大事だと思います。

ヨーロッパとの地形とは違うテレインですので、気候、生活習慣、地の利を活かして上位に入って欲しいです。自分もエリートクラスを目指し頑張ろうと思いま す。


(インタビュア・編集:円井基史)
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