ヨーラン・アンダーソン
スウェーデンナショナルチームコーチ
(昨年3月に開催されたコーチングクリニックからトレーニングに関する部分の抜粋)
・ 全てのコントロールをミスなく回ること。パーフェクトなレースは成功から学習する。
レース後にミスを反省しているだけではだめだ。自分は出来た、成功したことを理解する。
これはトレーニングにおいても重要。競技会ではもっと重要。
・ 勝利者はいつも作戦を考えている。敗者はいつもいいわけを考えている。
・ 情熱こそが重要な要因。なぜエリートオリエンティアになりたいか。
「なぜ」ということを聞いてそれを計画に組み込んでいく。
競技者としてのビジョンは何かということを明確にしてのぞまなければならない。
・ トップオリエンティアに必要な要素、一流選手が考えていることはよく似ている。
自分が得意なこと、計画性、意思などである。
○ヨハン・イバーソン:意思、システマチックな計画、技術の正確さ、熱意、自信
○ヘザー・モンロー:完全守備、規則正しい、熱意、走力、意思が強い
・ 勝利者とは2つの意味がある。結果として勝者になることと、完璧なレースをすること。
・ ワールドクラスの勝者になるためには。身体的には、ロードランナーではなく、
フォレストランナーになること。技術的には高いレベルのいろいろなテレインで走ること。
心理的にはより攻撃的なオリエンテーリングが出来ること。
・ 有酸素運動では常に最大酸素摂取量の80%で走り続けることができるようにすること。
このレベルだと乳酸がたまらない。そしてスキー、スケート等を取り入れたクロストレーニングで
ボリューム自体を増やすことも重要。オリエンテーリングでは常に競技スピードを意識する。
・ 乳酸閾値はあらゆるトレーニングの基準。
PRE-scaleという主観的なスケール(0−10の数値として設定)を利用する。
これは公園などの周回コースを走りながら自分自身で感じ取ることで設定する。
乳酸値が急に上がったと感じたところが乳酸閾値である。
乳酸閾値を上昇させることによって副次的に最大酸素摂取量が向上する。
・ PRE-scaleをトレーニングにあてはめる。7から9あたりの非常に強いトレーニングを
20から25分するとそれ以上は走れない。それは陸上競技的なトレーニングであり、
効果的なトレーニングであるが、ベストなトレーニング方法であるとはいえない。
・ 競技中のレベル程度でトレーニングを念頭に置く。PRE-scale5から6のレベル(インターバル
トレーニング)や、PRE-scale4から5のレベル(ディスタンストレーニング)。
・ 全てのランニングトレーニングは競技レベルのちょっと下あたりに設定する。
インターバルもディスタンスもテレインの中で行われる。
地図があれば尚良いし、周りに人がいれば尚良い。
・ 1から3のレベルは山歩きで鍛えることが出来る。1974年のWOCチャンピオンの
ベルント・フリレン(SWE)は、週4〜7時間しかレベル4〜6のトレーニングをしていない。
しかし、仕事が林業関連で、1日8時間歩いていたのでレベル1〜3は十分であった。
・ ヘザー・モンローはハルデンのクラブに移った後はオリエンテーリング中心の
トレーニングになり、オリエンテーリング以外で走る必要は無くなった。
それ以前のケンブリッジでは走り中心のトレーニングを積んでいた。
・ ジェニー・スティーブンソンのウインタートレーニングは、クロスカントリースキー、
エアロビクス、サイクリング、身体の重さでやるウェイトトレーニング。
ウェイトトレーニングは15〜25回程度の回数で動きができるトレーニングであり、
筋肉量をあまりふやさずに最大の筋肉の動きを高めるのに効率よい運動である。
週16時間程度、6時間がランニング、それ以外がクロストレーニング。
ランニングは競技スピードで行っている。
・ エリートランナーにとって「competition」(競技スピードでやる地図を使った高いレベルの
トレーニング)と「mapping」(地図調査者になったつもりの技術トレーニング)が必要。
その中間レベルのトレーニングをするのは良くない。
技術そのものは競技の中で行うことを常に念頭におく。
このスピードで出来ない技術があったとしたら、その部分の反復練習が必要になる。
また、オリエンテーリングのメカニカルな部分は頭の中での地図読みである。
反復練習するとしたらそれは地図読みである。
・ 勝利者へなるためのメンタルスキル。大きなチャレンジについて情熱を持つこと。
常に前向きに物事を捉える。成功と失敗の差はたったの21cm。21cmとは口と心臓の距離。
口で物事を言うのは簡単。しかし心臓、心で情熱を持つことはもっと重要。
その情熱でトレーニングのような大変なことに臨むことが出来る。
・ 2セッション×7日×52週間(=6年間)以上のハードワーク、これが世界の舞台に出る必要な量。
困難だが、これに対して愛情・情熱を持つことが大切。
・ 勝利者は常に目的に対するプランを考えている。敗者は言い訳ばかりを考える。
疲れているからトレーニングをしなくてよいとか。
・ レース中蜂が出てきたとかという予想外のことについても、そしてフィジカル的にも技術的にも
メンタル的にもあらゆることについての準備が必要。なによりも森の中でのオリエンテーリングが
とても楽しいということを考えなければならない。
・ スタートラインにたったときは代表になったことについて自信を持つことが重要。
そしてこれからのレースが全部ミス無く回れると思う自身も重要。
さらに自分がベストのパフォーマンスをできることを信じることが重要。
・ 重要なレースについては1年2年のスパンで考える。目標として優勝、入賞というものを持つ必要がある。
しかし、レースのスタートに立ったときはこうした順位的目標は消すべき。
スタートラインではパフォーマンスについてのみ考える。
・ その時点でベストを尽くすことだけ考えることはよい集中をもたらす。
これは大きなチャレンジだ、これは楽しいレースだ、結果についても責任を持てるのだ、と。
・ オリエンテーリングの技術はメンタルスキルの中に存在している。つまり、メンタルスキルと
フィジカルスキルのオーバーラップの部分である。よって、オリエンテーリングの技術を向上
させるためにはメンタルスキルの向上が不可欠。
・ 登りを走るとか他の選手と競いあうとき、足元の地面を強くけることに気を使うよりも、
より遠くの目標を見てそこへ向かっていくことを考えたほうが速く進める。そして、重要
なのは笑っているときのほうが怒っているときよりもはるかにエネルギーを使わないということ。
とても楽しいとか、ハッピーでいられることは余計なことを考えずにエネルギーに集中できる条件。
・ ミスしたときに着いたコントロールでは怒っている。そのためまた次のコントロールでミスをする。
よってコントロールを見つけたときにはハッピーでいるのもよい。
メンタルスキルにすぐれた選手はリスタートにも優れている。
・ ポジティブシンキング。自分が頭で考えることは自分で決めることが出来る。
よりよいことを考えることによって、よりよい結果を導くことが出来る。
・ 予想外のことも頭で考える。遅かったり、ミスしたり、犬が放し飼いになっている、
寒い、天気が悪い、ハンターに撃たれるかもしれない、ライバルと近くでスタートするかもしれない、
そんなことも念頭に置いておく必要がある。