イカヘイモネン
(通称:イーキス)
デンマークナショナルチームコーチ
(2003年1月学連合宿での講義:日本の学生へのアドバイスの要約)


○自分の現状を把握し、適切な目標を設定すること

・ 「現在地の把握」と「到達目標地点の明確化」は、レース中のルートプランにおいても、
 トレーニング計画の立案においても不可欠。

・ 現在自分がどのくらいトレーニングしているか、「週に(あるいは月に・年に)、
 何回か(あるいは何時間か・何回か)」回答できるかどうか。あらためて振り返ってみることが必要。

・ 自己分析や計画立案の際には、身近な、自分のことをよく理解してくれている他者からのアドバイスを有効活用する。


○トレーニングを習慣づけること

・ 「多くトレーニングしたものが多くの成果を得る」というのが大原則。
 まず、トレーニングを生活の一部とすること。

・ 体力増強のためのトレーニングの他、身体運動を伴わないトレーニング
 (読図練習や、メンタルトレーニングなど)も重視するべき。

・ 体力トレーニングに関しても、ランニングだけではなく、水泳、球技、筋トレなど色々あります。
 各自、自分に合った方法を見つける。


○トレーニングは徐々に量を増やし、徐々に内容を濃くしていくこと

・ 学生時代はトレーニング量を増やす絶好の機会。

・ トレーニング量は急激には増やせない。徐々に増やしていくこと。

・ 体力トレーニングは、目安として年間総量で20%までの増加であれば、
 故障等を避けつつスムーズに増やしていくことができる。

・ 読図練習など技術的なトレーニングも、最初の内は頭が疲れるが、続けていくと、
 同じことでも段々ストレスを感じずにできるようになるので、量を増やしていける。

・ 何もかもいっぺんに増やす必要はない。例えば、読図練習の量を保ちつつ、
 ランニング時間を少しずつ伸ばしていけば、トレーニングの総量は増えていくことになる。

・ 一度年間400時間というトレーニング量を経験してしまえば、仮に翌年350時間になっても、
 内容は維持することができる。仮に同じ年間350時間でも、それを超える量をこなしたことのある
 選手のトレーニングレベルは、そうでない選手よりも高いものとなる。


○まず、短いコースを速く、きっちりと走ること

・ 体力的要素の中で、スピードや敏捷性は、比較的短期間の内に高めることができる。
 一方、持久力の養成はかなりの時間を必要とする。

・ テレインでのナビゲーション練習も、短いコースを速く、ミスなく走ることから始めると良い。

・ 「速さ」には「足の速さ」の他、「判断の速さ」「手続きの速さ」も含まる。

・ 短いコースを速く、きっちりと走ること(*1) の延長線上に
 長いコースでのレース(*2)を全うすることがあると考えられる。

* 1 速く、きっちりと走るためには走行スピードのアップだけでなく、基礎技術の習得が前提。

* 2 長いコースでは平均スピードは下がるが、心身両面の持久力が問われる。
   そして、先述のように、それを身につけるまでには時間がかかる。


○始めて最初の数年は基礎の習得に努めること

・ 読図、コンパスワーク、歩測、パンチ時の動作など基礎技術の習得が初歩となる。
 ルートチョイスやプランニングを磨いたり、ナビゲーションを簡略化したりするのはそれから。

・ 更にその先の段階では、個々のテレインやレース形式への対応や、
 狙ったレースで実力をいかんなく発揮することへ向けての調整が問われる。

・ 最初の数年は基礎技術の習得と徹底を図る時期。それらを習得した後に、個々の状況へ対応する力を高める。


○読図(等高線読み)を重視すること

・ コンパスだけに頼り、いつでも直進で解決しようとする選手もいるが、まず大切なのは読図(特に等高線読み)。

・ 地図を読むことによって急斜面やヤブなど、回避するべき所を判断でき、目的地へ効率的に、速く到達することが可能となる。

・ 車の運転に例えると、コンパス直進はアクセルを踏むこと、読図がハンドル操作に当る。
 適切な進路を安全に進むためには、まずハンドル操作が必要。


○積極的にいろいろな経験をしてみること

・ 技術練習のためのトレーニングも、いろいろなテレインで行うこと、色々な地図を用いて行うことが重要。
 そうすることで、総合的な対応能力がアップする。入ったことのないテレインへ入るチャンスがあったら、是非入るべき。

・ 「ショート形式のレースで良い成果を出したい」と考えた時に、
 ショート形式のコースで走る練習だけしていれば良いということにはならない。
 スプリントやロングなど他の形式にも触れておくで、オリエンテーリングに必要な様々な能力が磨かれ、
 結果としてショートでの成功ももたらされる。

・ 「自分がコーチとなって初心者に教えてみる」「地図調査をしてみる」「コースを組んでみる」
 「運営者として大会での参加者の行動を観察してみる」ことなども、多面的にオリエンテーリングを
 考察し理解するために役立ち、自身の競技にとってもプラスとなる。


○オリエンテーリングは素晴らしい

・ オリエンテーリングには体力が必要ですが、その体力にも「スピード」「敏捷性」
 「全身持久力」「筋持久力」など様々な要素が含まれる。

・ また、「頭」も「目」も「心」もよく使うスポーツです。
 「心」についても、冷静さや忍耐力など様々な要素が求められる。

・ オリエンテーリングを通じて、自然と親しむこともでき、
 多くの場所へ旅もできるし、多くの友人を得ることができる。

・ こんな素晴らしいスポーツを、大学卒業と同時に止めてしまう手はない。
 是非、皆さんが長くオリエンテーリングを続けてくれるよう望んでいます。

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