キナバル国際クライマソン 2004

鏑木 毅


地方公務員
山岳トレイルラン選手

2002年・2003年 富士登山競走大会 優勝
その他、各種山岳トレイル大会にて優勝多数
著書(共著)に「トレイ ルランニング入門 − 森を走ろう」(岩波書店)






レース結果:16位、タイム3時間07分35秒(順位は日本人歴代タイ)

優勝はイタリアのBruno Brunod選手、タイム2時間40分4秒


レース序盤から欧州勢がハイペースで引っ張る展開。このペースは国内のレースでは体験できないほどハイペース。あれだけの急斜面を飛ぶように駆け上がって 行く。“こんなペースについていったらとても最後までもたない。”心拍数が急上昇しないように落ち着いてレースを進める。上りは階段の連続のような段差の あるのぼりであるため、高速のスクワットをしているような動きで必死に上る感覚、3900m付近から岩盤帯となり、走りやすくはなるが、酸素不足であるた め身体が動かない感覚となる。まわりで競っている選手も条件は同じで標高が低い山であれば簡単に走れるような傾斜であっても、ビデオのコマ送りをしている ような感じの動きとなってしまう。こんななかでも富士でのトレーニングが効を奏したか、上位との差を詰めることができた。高地順応は完璧にできたと思う。 山頂付近はとにかく寒い、レースで熱を発していなければ5分といられないような寒さ。山頂を10位で折り返す。下りの途中で今年度の富士登山競走で苦杯 をなめた進藤さんと交差、「引き締めて下れ!」との雄叫びをうけ加速、さすがの進藤さんもあまりの難コースのためかかなり苦戦しているようだ。

いよいよ得意の下りで順位をあげようと気持ちを切り替え、岩盤帯の下りでは上りでは4つんばいではい上がるような斜面でも、周りのスカイランナーは下りは 飛び降りるように下って行く“信じられない、こんな下り方をしていたら最後まで体力が持たない”下りなのに心拍数は下がるどころか、極度の緊張感も伴っ て、かえって上昇する感じ。まわりのランナーはスカイランナーと呼ばれる世界各地の山岳レースを転戦する強者ばかり、国内のレースであれば下りで簡単に前 の走者との距離を詰めることができるはずが、さすがにレベルが高く逆に引き離されるような状態、そして絶対に抜かれるかといった殺気を感じる、これはまさ にバトルだ、上位にこだわるのならこの精神的な戦いにも勝たなければならない。とにかく速い、焦ってぺ一スを上げたところ、左足を強打(捻挫)し、以後の 下りでペースを上げることができずに、10位から結局16位までペースダウン。

外国人選手の上りでは心肺機能の強さを、下りでは、転倒ギリギリのペースで下る技術を見せつけられ、圧倒的な力の差を感じた。特に下りは熱帯の濡れた急斜 面の岩場の下りを信じられないような速さで下る状況を見て、とんでもないレースに出てしまったなと思った。 今回は成績的には全く収穫はなかったが、世界 のレベルを直接肌でかんじることができ本当に満足。くどいようだがとにかく世界は強い。

帰りの機内で身体は疲れていたが、頭は興奮していた。今後日本人選手であれほど高速で上る心肺機能を兼ね備え、あれだけの下りの技術をもったトレイルラン ナーが現れるか疑問?今後日本人でクライマソン10位以内に入るトレイルランナーが現れるだろうか?自分にそれができるだろうか?もっともっと国内のトレ イルランナーは積極的に海外レースに参戦し、高度なトレイルの体力・技術・そして精神力を磨く必要がある。“真のトレイルランナー”にならなければならな い。

今回は自分自身具体的に強化できる点が何点か見つけることができ、今後のトレーニングの方向性を建てる上で本当に参考となった。もっともっと強力な心肺機 能、そして自爆すれすれの極限スピードで下る、精神力と技術、これらを手に入れなければならない。

とにかくもう一度走りたい、もう一度走らなければ到底納得がいかない。

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