200301run




１月ランニングクリニック合宿の報告


目次

１．合宿のねらい　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宮川委員
２．合宿プログラム
３．指導内容
（１） オリエンテーリング選手・コーチに対する陸上競技トレーニング指導講演　有吉委員
（２） オリエンテーリング選手・コーチに対する陸上競技トレーニング指導実技指導　有吉・田嶋委員
（３） 陸上競技選手に対するオリエンテーリング指導　小林委員
（４） その他のプログラム報告　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　
４．各委員より感想
（１）オリエンテーリング選手・コーチに対する陸上競技トレーニング指導して
（２）陸上競技の指導を受けて（コーチの立場から）　　
（３）陸上競技の指導を受けて（選手の立場から）　　　　
（４）陸上競技選手に対するオリエンテーリング指導をして　　　　　　　　　　
（５）総括　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
５．資料
（１）参加者リスト
（２）会計報告
（３）使用地図




オリエンテーリング選手・コーチに対する陸上競技トレーニング指導

指導：有吉正博（選手強化特別委員）　田嶋三子雄（選手強化特別委員）
コーチの立場から参加：藤井範久（選手強化特別委員）
　　　　　　　　　　　村越　真（WOC　SQUAD　JAPAN）
　　　　　　　　　　　尾上秀雄（WOC　SQUAD　JAPAN）
選手の立場から参加　：高野由紀（選手強化特別委員）
陸上競技選手に対するオリエンテーリング指導
指導：小林岳人（選手強化特別委員）
　　　広江淳良（WOC　SQUAD　JAPAN）
　　　宮川祐子（WOC　SQUAD　JAPAN）
斉藤宏顕（WOC　SQUAD　JAPAN）
合宿全般・企画・総務
宮川達哉（選手強化特別委員）
石井龍男（WOC　SQUAD　JAPAN）
協力団体
（財）日本陸上競技連盟
WOC　SQUAD　JAPAN
ES関東オリエンテーリングクラブ
日本エアロビクスセンター



１．合宿のねらい
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　宮川達哉（選手強化特別委員）
　　　　
平成14年10月25日当委員会において決定された中間とりまとめ案が、日本オリエン
テーリング協会理事会において了承された。これに基づき、平成15年度以降、
WOC2005に向けてオリエンテーリング強化計画が実施される。本合宿は、同計画策定
にあたって、資料収集のため、試行されたものである。
中間とりまとめ案においては、新たに発掘した選手に対するオリエンテーリング技
術の指導とトップオリエンティアに対する競技力向上の指導（特に陸上競技の手法を
使った）が2本柱となっている。本合宿では、来年度以降の本実施に先立ち、本委員
会各委員による試行として実施されたものである。
本合宿で収集された資料を今後本委員会審議において参考にすることにより、今後
具体化される計画案をより確実なものとしていく事が出来ると考えている。


２．合宿プログラム

期日 　　 平成１５年１月１２日（日），１３日(祝・月)
場所　　　日本エアロビクスセンター （ＮＡＣ）　
内容　　 １／１２(日)　
　　　　　　　１０：００　千葉市立昭和の森公園オリエンテーリング大会
　　　　　　　　　　　　　日本ランキング指定大会
　　　　　　　１４：００　合宿参加受付　　　　　
　　　　　　　１５：３０　フィンネンバーン１Km×１０～１５周・・・・・・・④（１）
　　　　　　　１７：００　入浴　　　
　　　　　　　１８：００　夕食
　　　　　　　１９：３０　有吉委員講話・質疑応答・・・・・・・・・・・・・①

　　　　 １／１３（祝・月）
　　　　　　　６：００　　起床　朝練習（フィンネンバーン１Km×４周）・・・④（２）
　　　　　　　７：００　　朝食
　　　　　　　９：３０　　有吉委員による実技指導（於：トラック及びフィンネンバーン）②
　　　　　　　９：３０　　小林委員による実技指導（於：昭和の森公園）・・・③
　　　　　　　１２：００　昼食　
　　　　　　　１４：３０　田嶋委員による実技指導（於：トラック及びフィンネンバーン）②
　　　　　　　１５：３０　田嶋委員による質疑応答及びフォームチェック・・・④（３）
　　　　　　　１７：００　入浴後解散


　　　　　      ※　フィンネンバーン　木のチップを敷きしめた柔らかな路面
　　　　　　　　　　約１Km　登り３５ｍ　一部階段あり
　　

３． 指導内容

（１） オリエンテーリング選手が陸上競技トレーニングを行うにあたって（講演）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　有吉正博（選手強化特別委員）

①　２１世紀の陸上競技はクロスカントリーであるべき

　　　クロカンを通じてＯＬと陸上長距離が近づける。

②　陸上トレーニング協力ネットワーク（人と場所）の紹介（別紙資料）

　　　指導陣は、走るトレーニングのプロばかりそろえた。
　　　受身ではなく良さそうなところを吸収しに行く気持ちで、気軽に。
　　　関係を作ってランナーをＯＬに引き込むくらいの気持ちで。
　　　参加頻度は応相談。土曜日だけ週一回でも。
　　　練習の場所を利用するだけでも。
　　　練習時間帯：通常（月から金、授業のある時期）は３時頃～
　　　休日や夏休みなど授業のない時期は１０時頃～
　　　連絡のとりかたとしては：オリエンテーリング選手側の窓口は設定予定。
　　　個人レベルでも話は通っている。

③　走力アップとクロスカントリー

　　　長距離に必要な３本柱

　　【スタミナ（有酸素）】
　　　マラソンランナーも練習の７０％は低強度の走り込み
　　　圧倒的な量をこなすことにより、日本マラソン界の成功要因

　　【ペース作り】
　　　日本選手は一定ペースでは良いがペース変化に弱い、勝負どころが弱い。
　　　→クロカン練習が最適　
　　　世界的にはケニアが強い、３０００ｍ障害などは圧倒的な強さ。
　　　なぜか：舗装されていない丘陵地帯を学校まで１０ｋｍ歩くなど、
　　　日常の中でトレーニングをやっている。
　　　オリエンテーリングはペース変容度の大きいスポーツ、専門的ペース作りが必要。
　　　→陸上でもクロカン的トレーニングが必要
　　　陸連でも強化にクロカンをとりいれている。
　　　中学クロカン駅伝　今後３ヵ年　昭和の森で実施予定
　　　千葉国際クロカン。クロカン世界選手権。
　　　クロカンの躍動感のある動きをアピールしていく。
　　　クロカンのトレーニングは、地形で自然に変化がつくもの（坂道を利用したインター
　　　バル）と、積極的に取り出してやるものがある。（サーキットトレ的なインターバル）　
　　　例：
　　　変則インターバル（トラックで同じペースでくるくる回るのではなく、変化を
　　　つけると知らず知らずの内にトラックで３０～４０ｋｍできてしまう）
　　　　１０周ジョギング
　　　　５周１２０ｍ曲走路ジョグ８０ｍ直走路ダッシュ
　　　　５周ジョグ（逆周りもよい）
　　　　５周２００ｍ快調に３２～３５秒くらいで２００ｍジョグ
　　　　５周ジョグ
　　　　以上を２セット
　　　　１０周ジョグでクーリングダウン
　　　北欧が長距離に強かった理由：　ファルトレック（スピードプレイ）と聞いている。

　　【フォーム作り】
　　　翌日の実技で。

④質疑応答

・一日のなかで分割トレは効果があるか？
　　　月間平均７００ｋｍのためには朝１０ｋｍ前後を行う。
　　　３０％は朝練習という事例もある。


・マラソンのトップ選手では、月１０００ｋｍという話しも聞くが？
　　　いつもそこまでやっていない。やる月もある程度。

　・低強度とは？
　　　　若者だとＨＲ１２０程度　メニューは積極的に変える方が良い。

　・レース前の強度バランスは？
　　　　７０％が低強度というのはレースの近い遠いにあまり関係なく同じ。
　　　　指導者は考えるが、実態調査では変わっていない。
　

・どのくらいの量を？
　　　少なければだめ。しかし、多ければいいわけでもない。
　　　一時間ではもの足りない、二時間くらいは必要。


・ オリエンテーリング（ロングで90分）の場合どのくらい？
　　　低強度は７０％より少なくても良いかもしれない。


・高強度をやると後に影響が出るのだが？
　　　インターバルは追い込み過ぎてもいけない。週一回なら十分回復するくらいがよい。


・インターバルの内容は同じパターンになるか？
　　　変化をつけたほうがいい。勝ちパターンはない、積極的に変える。
　　　一定のトレーニングはあきる。変化に弱くなる。
　　　変化はストレスになるが、これを打ち破る。


・７０％が低強度だが、残りの３０％は？
　　　１万ｍのベストのペースで１０００ｍのペース走とか、タイムトライアル。
　　　レースペース（HR１５０くらい）が中心。
　　　低強度のインターバル、中強度の持久走やインターバル、高強度の持久走やインター
　　　バルなど多様なことをやっている。距離はたいしたことはない、３０％の中身を
　　　重視。


・ＡＴレベルを上げるためには？
　　　１０００ｍのペース走はまだ苦しくなるちょっと前なので、２０００ｍくらいにする。


・一流選手の条件（傾向）は？
　　　粘り強くこつこつできる人、規則正しい生活ができること。


・ふだんから心がけるべき事は？
　　　生活の中にトレーニングを組み入れる。
　　　トレーニング以外で歩いたり、走ったり。


・プロ選手などはシーズンオフがあるが？
　　　陸上にはない。練習の中断はだめ。ゆったりとしたトレーニングの時期は必要。
　　　気楽に精神的にゆとりを持つことは大事。



・フォーム作り、特にアップダウンの時は？
　　　転倒しないように走るのが前提。
　　　練習すればするほど上手くなる。明日の実技で説明する。
　　　平地でのフォーム作りも必要、バランスが大事。


・疲れがたまった時はどうしているか？ストレス対策？体のケアは？
　　　（中田氏（ＮＴＴ東京）が回答）
　　　心身のストレスには、まず睡眠時間の確保。
　　　食事は、朝をしっかり食べて夕食は少なく。
　　　足とともに上半身のケアもやっている、特に背中を中心に。
　　　足はストレッチとマッサージ（マッサージはほとんどセルフマッサージ）



・（中田さんに対し質問）仕事をもちながらのトレーニングを続けておられるが
　食事のタイミングなど？
　　　朝は起きてジュース、１０分くらいで練習開始。
　　　そのため、寝ている間に体を冷やさないことを心がけている。
　　　帰宅が夜９：３０頃の時は軽食後練習、練習が終わってから食事、食後1.5H位で就寝
　　　帰宅が夜７時頃の時は食事をしてから練習、このときポイント練習。
　　　風邪をひかないことは重要。練習後すぐ風呂、温かい紅茶を飲んで寝るなど。


・（中田さんに対し質問）暗い時間のトレーニングはどういうところでやっているか？
　　　街頭の多い公園（例：井の頭公園）
　　　近くの公園で４００Mくらいの周回路を利用。
　　　大通り沿いは避ける。（危険が多い）

　・上半身の鍛えは？　筋トレは？
　　　ウエイトトレーニングは大いにやると良い　特に女子は走りの回復時に
　　　ウエイトトレ的なものを。ある程度筋肉をつけることは、重要。

　・サプリメントの利用はどうか？　　
　　　大いに注意すべき。

　・ピーキング方法、その確認方法は？
　　　トップ選手でも悩んでいる。
　　　（中田氏より回答）
　　　自分も上手い方ではない。気持ちの面が大きい。
　　　１週間前くらいから何度かレースペースで本番の１／１０くらいの刺激を与える。
　　　例：ハーフマラソンなら１０００M（レースペース）3本＋２０００M
　　　３０００M障害なら４００M（レースペース）5本
　　　身体が走りたくて仕方が無くなり大会が待ち遠しい状態になるように持っていく。
　　　もし１週間前に身体が重かったらたぶん疲れていることが多いので量を減らす。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　以上


（２）オリエンテーリング選手・コーチに対する陸上競技トレーニング指導（実技指導）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

有吉正博（選手強化特別委員）
田嶋三子雄（選手強化特別委員）

指導対象者：オリエンテーリングトップ選手（別表）

① ウォームアップ
　　　腕の役割に注意
　　　手足の使い方に注意

② ウインドスプリント
　　　３０ｍで０％から70％にあげる
　　　次の３０ｍを70％で維持
　　　最後の３０ｍで70％から０％へ
　　　フォームのチェック

③ インターバル（モデル）
　　　トラックにて　　　
　　　３周ジョグ
　　　３周直走路をダッシュ、曲走路をジョグ
　　　３周ジョグ
　　　３周２００ｍダッシュ
　　　フォームについて全般的にはＯＫ

④ アップヒル、ダウンヒルの走り方
　　　フィンネンバーンの登り下りのある部分を利用
　　　アップヒル、ダウンヒルをダッシュ、つなぎをジョグ（リラックス）
　　　スピードの変化を意識
　　　トラックの時より生き生きとした動き
　　　今回は３０秒程度だが、登り１分くらいのダッシュも必要
　　　登りは舗装路でも可。中距離のトレーニングに利用している。

⑤ ウェイトトレーニング
　　　片手で引き合い
　　　片足スクワット
　　　両足スクワット
　　　交差ジャンプ
　　　２人組み腕立て伏せ
　　　体幹部のトレーニング（腹筋、背筋）
　　　上体のストレッチ
　　　以上、午前中のトレーニング

⑥ フィンネンバーンのフリートレーニング
　　　サブコースを使って、激しい登り下りを入れたり、小集団でのビルドアップ走
　　　などで変化をつけながらの走り込み。
　　　田嶋先生に適宜観察していただく。
　　　気がついた点として、
　　　トレーニング前後のストレッチは重要、オリエンテーリングの場合特に必要で
　　　はないか。
　　　フォームに関するものとしては、
　　　陸上競技としてみると、少し腰の落ちたフォームが気になる。腕の振りも少な
　　　い。脇があまい。肘が張っている。肩が張っている。
　　　一方で、オリエンテーリングの種目特性から考えると、
　　　踏み込んだ足が安定しないから、腰が落ちるのか。
　　　急勾配でバランスをとる必要性から、脇があまくなるのか。
　　　地図を読みながら走るから、腕の振りが少なく肩が張っているのか。
　　　今後研究の余地あり。

⑦ 質疑応答
　　　実技指導は⑥までで終わりだったが、各選手とも個別のアドバイスを受けよう
　　　と、その後も田嶋先生をとり囲み質問が続いた。さらに、トラックへ戻り有志（6
　　　名）による1000Ｍタイムトライアルも行われた。オリエンテーリング選手側のフォー
　　　ムに関する高い関心と、陸上競技のノウハウを吸収しようという姿勢のあらわれが見
　　　られた。



（３）陸上競技選手に対するオリエンテーリング指導

小林岳人（選手強化特別委員）
指導協力：ES関東オリエンテーリングクラブ
指導対象者：中田崇志（東京学芸大学OB、NTT東京所属）
　　　　　　5000M14:20　10000M29:51　3000MSC8:56（全日本インカレ7位）
　　　　　　八木洋子（東京学芸大学4年、実業団チームスズキ自動車入部予定）
　　　　　　5000M16:42　10000M34:41　
　　　　　　1月26日大阪国際女子マラソンで初マラソンに挑戦予定
指導場所：千葉市昭和の森
　　　　　
2.8kmコース（コースプラン広江淳良）
一般的なオリエンテーリングのやり方を実地指導
　中田選手の指導…広江淳良
　八木選手の指導…宮川祐子
　　歩いてコースを回る。
　　大阪国際女子マラソンを控えており、けがに注意。
　　地図から地形をイメージさせ、実際現地を対象させる練習
　　森の中の走りを見学。

2.1kmコース（コースプラン広江淳良）
１．広江淳良　14分
２．小暮喜代志15分
３．土井聡　　16分
　　中田崇志　23分（一人でやる。小林岳人追走）


（４） その他のトレーニングプログラム

① 1日目のフリートレーニング
昭和の森大会参加後ということもあり、メニューは特に設けず、自主練習とした。
大半がフィンネンバーンを10～15周走りこんだ。ＬＳＤやビルドアップ、ペース走など。

② 2日目の早朝トレーニング
1日目の講演の質問に「早朝トレーニングの注意点は？」という内容があったため、
中田選手の指導により行われた。参加者は、7時間以上の睡眠をとるため、11時前に
就寝。起床後水分補給。午前6時に集合。宿舎からフィンネンバーンまで往復１Ｋ
ｍ。フィンネンバーン４周（１周4分40秒程度）。朝練習の注意点や意義などについ
ての説明を受けた。陸上競技のトップ選手の朝練習を実地体験できた。