金沢大学オリエンテーリング部:
(2016年度インカレ、リレーにて男子初優勝、ミドル準優勝)インタビュー

大箭歩、渡邊壮、大竹達也

(取材日:2017年3月26日、インタビュアー・編集:円井基史)



2017 年3月17-19日、滋賀県高島市で行われた日本学生オリエンテーリング選手権(インカレ)。18日、個人種目 であるミドル・ディスタンス競技で金沢大学3年男子の渡邊壮と2年女子の山森汐莉がともに準優勝。19日に行わ れたリレー競技では、金沢大学が女子(鈴木彩可-木村史依-山森汐莉)4位、男子(大箭歩-渡邊壮-大竹達也) は初優勝と、大活躍。

5年前、金沢大学がインカレリレーで女子初優勝、男子5位 入賞したとき、辻晃氏、池嶋美佳氏に話を聞いた。
金 沢大学オリエンテーリング部 (2011年度インカレリレーにて女子優勝・男子5位入賞)

今回は、男子リレー初優勝の快挙を成し遂げた大箭歩、渡邊壮、大竹達也の3選手に集まってもらい、インタビュー を行なった。


参考 記事
超 高速テレインの個人戦、猪俣・森谷が制す – 2016年度インカレミドル(OK-Info)

大 混戦のリレー! 金沢大初優勝、東北大二連覇! – 2016年度インカレリレー(OK- Info)
金沢大のレース展開に関する部分を抜粋:
1走の大箭について
金沢大はスペクテーターズレーン時点では3位まで順位を上げていたが、最後のループでコントロール飛ば しに気付き、9位まで順位を落としてしまっている」。
2走の渡邊について
第3中間で集団からは2分遅れて6位だった金沢大学…前日のミドルで準優勝の渡邊壮が順位を上げてき た。2走開始時には金沢大は名大と一緒のスタートだったが、途中で置いて行かれてしまい、後ろから来た神戸 大学(築地孝和)と一緒に走っていたという。だが、最後のループで序盤に離された名大を再びとらえ、最後の 最後で追い越した。1位の横国大と2位以下の差は、第1中間では5分以上あったが、2走終了時には1分20 秒にまで縮まっていた。勝負はアンカーに託された」。
3走アンカー大竹について
第2中間、金沢大がトップに立つ
第3中間ではまたしてもトップが変動、名大が最初に通過した。遅れること32秒で金沢大が通過、そして その20秒後に東大がついに3位まで順位を押し上げてきた
第3中間後のスペクテーターズレーンでは、選手の後押しをすべく仲間からの大声援が飛ぶ。会場を最初に 通過したのは名大、そして次に通過したのは東大…金沢大を途中で抜き去ったようだ。金沢大も後から続く
会場で最高潮の応援が飛び交う中、姿を現したのは金沢大の大竹! そして、すぐ後ろには名大の石山の姿が。大竹が最後のスパートで石山を振り切り、金沢大学の優勝が決まった
金沢大学の大竹に話を聞いたところ、実はフィニッシュしたとき優勝だとは思っておらず、『(最後のルー プで)石山や猪俣の姿を見て「負けられない」という一念で走っていたとい う。優勝と聞いて驚いたそうだ」。

動画
IC2016 relay(Zakio1119、youtube)





――― 本日はお忙しい中集まって頂き、ありがとうございます。5年前、金大女子がイ ンカレリレーで初優勝したとき、辻君と池嶋さんにインタビューさせてもらいました。今回は男子が初優勝ということで、その様 子や、そこに至るまでのトレーニング、3人のオリエンテーリングに対する姿勢などを聞きたく、集まってもらいました。

まず簡単に、皆さんの出身地(都道府県)、そして金沢大の何学科か教えてください。また3人とも、高校時代は陸上部長距離と 聞きました。1500m、3000m、5000mなどの持ちタイム(ベストタイム)もよければ教えてください。

大竹:
福島県出身。学科は、数物科学類物理学コースというところです。800mのタイムは2’00。

大箭:
新潟県出身。自然システム学類。1500mのタイムが4’09です。

渡邊:
山梨県出身。大箭と同じで自然システム学類。800mが1’59、1500mが4’08、5000mが15’39です。

   出身 学類       ベストタイム(いずれも高校のもの)
大竹 福島 数物科学類    800m:2’00
大箭 新潟 自然システム学類      1500m:4’09
渡邊 山梨 自然システム学類 800m:1’59, 1500m:4’08, 5000m:15’39


――― なぜ、大学でオリエンテーリング部に?

大竹:
大学では陸上競技で自己ベスト出せる気がしなくて。親が山好きで、子供のとき登山経験があった。(オリエンテーリング部 に入ったのは)「山+走る」で、オリエンテーリングなら勝てそうな気がしたからです。

大箭:
走るのは好きだけど、陸上競技とは別のスポーツをしたく。それでオリエンテーリングを選びました。ただ初めは、山(に入 ること)には多少抵抗がありました。

渡邊:
入学当初は陸上部に入ろうと思っていましたが、見学に行って、そこまでレベルが高くなかったのでやめました。オリエン テーリング部の勧誘で大竹さんや石坂(翼樹)さんに声を掛けられ、陸上のタイムも聞いて、(オリエンテーリング部に)入ろうかな と。小さい頃から山には慣れており(山中で秘密基地を作ったり、山菜取りなど)、山には抵抗なかったです。


――― 普段のトレーニングについて教えてください。例えば月間の走行距離は記録しているかとか、距離重視or質・負荷重視 とか、地図読み、オリエンテーリング重視とか。

大竹:
インカレ直前は卒論もあり、あまり走っていませんでした。平日は走らないけど、毎週末にオリエンテーリング、といった感 じ。比較的トレーニングしていた時期も、基本的にJOG重視。オリエンティアはみなJOGばかりしている印象。一番距離を走って いた時期で、月間250kmを3ヶ月程度です。

大箭:
MAXで月250kmってヤバくないですか?

円井:
多いってこと?

大箭:
いや、少ないってことです。

大箭:
僕の場合、渡邊もそうだと思うけど、基本的にトレーニングは走りを重視。インカレ前はあまり走れていなかった。一番距離 を走っていた時期で月間400km弱。負荷重視で、坂道ダッシュや登りのトレーニング。よくキゴ山(金大近くの山、標高460m ほど)に走りに行きます。

渡邊:
インカレ前は、自分もあまり走れていませんでした(※つまり3人ともインカレ前はあまり走れていなかったとのこと)。 1500mで4分半を切りたくトレーニングをしているが、今は切れておらず4:39程度。1回に走る距離は7-8kmで負荷重視 です。

円井:
単純に不整地を走った場合、走力・スピードはどういう順番になる?

大竹・大箭・渡邊:
不整地の走るスピードは、渡邊>大箭>大竹だと思います。ただし、大箭は登りが強い、大竹はコンタリングが速い、という 傾向にあるかな。


――― インカレ後の講評で「テレインに残雪があったため、雪を走り慣れている金大や新潟大が今回速かったのでは?」という 声もあった。実際はどうですか?

大竹・大箭・渡邊:
関係ないと思います。雪の上だと我々も遅くなるので、雪を避けて走っていました。


――― 私が併設大会を走ったり、選手権リレーのコースを見た限りだと、今回のコースは簡単で、ミスする要素が少ないと感じ た。ナビゲーション技術より走力重視に思えたが、実際はどうでした?

大竹(リレー3走):
(リレーについて)自分は、1分のミスを2ヶ所程度。自分のオリエンテーリングは、遠くを見る技術を得意としているの で、それは活かせたと思います。

大箭(リレー1走):
普通のミスは1分ほどを1ヶ所。それから、会場のビジュアル後の終盤のループでコントロールを1つ飛ばしてしまい戻った ので、そこで2分半ほどタイムロスしました。

渡邊(ミドル準優勝):
ミドルでは、序盤の山(急斜面)の地帯では地形読みで集中してうまくこなし、フラットになってからガンガン走るよう切り 替えました。

大竹(ミドルは9位相当のタイムでゴールしたものの、コントロール不通過で失格):
ガンガン走るように意識したの?

渡邊:
はい。前の選手も見えていたので、追い付くことを意識したり。


――― 今回、滋賀県での開催で、微地形のテレインかと思っていたが、実際は全く違って、フラット、直進、高速テレインだっ た。対策はできていましたか?

大竹・大箭・渡邊:
正直、対策はできていませんでした。合宿は微地形の山で行なっていた。ただ、直前の名古屋大との合同合宿は、作手高原、 亀山城址で行い、そこではフラットな直進の練習ができ、それが大きかった。一緒に練習した名大が今回リレーで僅差(9秒差)の2 位で、因縁というか、合宿でお世話になった分、申し訳ないというか。メニューを組んでくれた名古屋大には感謝しています。


――― 微地形テレイン、または、起伏の激しいゴリゴリの山だったら、リレーで優勝できていたと思いますか?

大竹:
微地形だったら優勝できていなかったと思います。登りが多いゴリゴリ系だとまだチャンスはあったかも。今回フラットで走 力が求められる中、ミスを比較的少なく抑えられたことで優勝できたと思います。


――― 大箭選手に質問です。昨年、2年生ながら1走で速かった(4位で帰還)。1走が得意? オリエンテーリングに対する 姿勢は、どのような感じですか?

大箭:
集団走が得意です。正直、個人戦は特に意識しておらず、いつもインカレリレーを目標にしている。とは言っても、金大関係 者には負けたくない。当然渡邊や大竹さんにも負けたくないし、今はOBの石坂さんが一番の強敵です。


――― 渡邊選手について。先月のウエスタンカップリレーの2走後半あたりで、金大の男子と一部併走して、キビキビ動く速い 選手だなと思って、後で調べたら渡邊選手でした。インカレ個人戦2位とは、(以前あった幻の優勝(ラス前コントロールの電子 反応がなく失格)の笹谷選手の特例はあるものの)金大史上、最高順位ですか?

渡邊:
個人戦2位は、金大男子では最高順位だと思います。(※女子は五味あずさ氏が優勝している。)

円井:
優勝は狙っていた? それとも予想外の結果?

渡邊:
狙っていたわけでなく、全くの想定外です。ゴールしたときの手応えでは、良くて10位くらいかなと。初めてのエリート (選手権クラス)で、エリート選手はとてもレベルが高いと思っていた(※渡邊選手は、2016年秋のインカレスプリントを除い て、今回ロング、ミドル合わせて初の選手権クラス出場。リレーも今回が初代表)。まさかの結果でした。

円井:
先ほど、序盤から平坦になってガンガン走ったというコメントがありました。どんなレースでした?

渡邊:
レース内容としては、序盤の起伏がある山では、地形を読んでうまく進め、フラットになってから、ガンガン走りました。ミ スを抑えられたことと、しっかり走れたことが、今回の結果に繋がったと思う。前にスタートした3選手を追い抜いていく感じだった が、常に前に選手が見えているわけでなく、1人で進む時間も多かった。たまに他の選手と並走したが、一度自分が抜いて、コント ロール周りで小さなミスをして、パンチが同時、といった感じ。コントロール周りではちょいちょいミスをしています。


――― 大竹選手に質問。以前「峨山道トレイル」の試走で一緒に20kmくらいトレランしたことがあり、そのとき「体力ある なあ」と感心しました。キゴ山のオリエンテーリング大会で、オリエンテーリングを始めたばかりの1年生の大竹選手に負けたこ ともあります。1年次の春インカレの新人クラスで、優勝タイムでゴールしたけど、ペナ(失格)だったとも記憶しています。今 回ミドルもペナ。ペナ癖がある?

大竹:
ペナは多いですね。基本、コントロール番号は見ていないです。リレーではさすがに確認しましたが。

円井:
Twitterでは、イケメンとか、脱ぎキャラとか、いじられているように見受けますが、なぜ?

大竹:
全国の同期と、とても仲が良いからです。インカレ後夜祭、他大学との合宿、同期会などで仲良くなりました。

円井:
3年次(2年生後半〜3年生前半)は部長でした。部をまとめて来た?

大竹:
自分は、強いリーダーシップがあるわけでなく、高い競技力で引っ張るわけでもなく、事務能力も足りず、不甲斐ない部長 だったと思います。

円井:
OMM(オリジナルマウンテンマラソン。テントと食糧を背負って2日間長いオリエンテーリングを行う競技)にも出ていま す。今後、オリエンテーリングとはどう関わる予定ですか? OMMやトレイルランニング方面に行くとか。

大竹:
基本的に、色々な山遊びをしたいと思っているし、他の人にも、もっと山で遊んでほしいと思っています。WOC(世界選手 権)は目指さないと思う。そこまでストイックに人生を賭けるのは厳しいと思っている。トレランにも興味はあるし、そこそこ速い選 手ではいたいです。


――― 今回、山森汐莉選手がミドル準優勝でした。まだ2年生。直接話が聞きたかったですが、彼女はどんな選手ですか?

大竹:
2位になったのは正直驚きです。脚はそこまで速くない。速いより、うまいタイプだと思います。


――― 毎年金大はリレーで入賞に絡み、また次々と強い選手を輩出している。クラブとしての強化ノウハウがあるのか、雰囲気 が良いのか、先輩の協力があるのか、どんな感じですか?

大竹・大箭・渡邊:
今年でいうと、OBの石坂さんの協力・貢献が大きいと思います。合宿のコントロール設置などもたくさんしてくれた。石坂 さん自身、オリエンテーリングが速いし、とても助かる存在です。

円井:
ちなみに、渡邊君と石坂君だと、どちらの方が脚が速い?

渡邊:
短い距離(1500mとか)なら自分、長い距離(ハーフマラソン等)なら石坂さんだと思います。


――― 過去、金大関係者で世界選手権(WOC)、ユニバー(世界学生選手権)、JWOC(世界ジュニア選手権)に行った選 手は、誰がいますか?

大竹:
五味さんが、ユニバーとWOCに行っています。あと、現在石川県オリエンテーリング協会にいる小林力さんがJWOCに 行ったと聞いています。


――― 今回リレーの代表3人は、金大の他のメンバーと実力差があって選ばれたのか、他の選手と差はあまりなかったのか?

大竹・大箭・渡邊:
金大は選考レースがいくつかあり、ポイント制で代表選手を選出しています。以前からこの3人で走りたいと思っていたが、 実はなかなかうまくポイントが取れなくて苦労した。ちなみに大箭は、2年生ではロング、ミドルの選手権クラスを走っているが(ロ ングでは2年生で20位)、3年次は怪我とか不運もあって個人戦のセレクションは落ちている。渡邊も、これまでセレクションを 通ったことがほとんどなく、今回初めてミドルとリレーの選手権を走れました。


――― 最後に、今後の目標などを教えてください。

渡邊:
インカレの個人戦では、入賞を目指したいです。ただ、ロングは得意でない。ロングとスプリントは入賞、ミドルは優勝と言 いたい。ただし、(これまで落ち続けた)セレクションを通過できたらの話。

大箭:
先ほど言ったように、リレーを重視しています。ただ、金大関係者には負けたくないので、必然的に、個人種目で、渡邊にも 負けられない。

大竹:
大学院に進学し、4月以降も後輩と一緒に活動する予定。WOCは考えていないが、ユニバーシアードには出たい。もうしば らくはオリエンテーリングをしっかりやるつもりです。


――― 余談の質問ですが、大竹選手に。金大OBOGの強い選手が、石川、富山、福井にいても、地域クラブもないためか、競 技を続ける人が少なくてもったいない、と思っています。そのあたり、どう考えますか?

大竹:
やはり大会に行って、知り合いがいないと、大会参加もしづらくなると思います。ただし、僕らの代は全国の同期がとても仲 が良いので、僕らの代はオリエンテーリングを続けてくれると期待しています。


――― 本日は貴重なお話ありがとうございました。改めて、リレー優勝、おめでとうございます。私が顧問を務める金沢工大オ リエンテーリング部は、まだまだ未熟なチームですが、機会を作ってコラボレーションさせてください。今後ともよろしくお願い します。

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