金沢大学オリエンテーリング部
(2011年度インカレリレーにて女子優勝・男子5位入賞)インタビュー

辻 晃、池嶋美佳

(取材日:2012年4月1日、インタビュアー・編集:円井基史)




2012年3月10-11日に滋賀県希望 が丘文化公園で行われた2011年度日本学生オリエンテーリング選手権大会(インカレ)において、初日のミドルディスタ ンス(個人戦)で6位入賞(北 翔太)、2日目のリレー(大学対抗団体戦)で男子5位入賞、女子優勝という大活躍をみせた金沢大学オリエンテーリング部。

その強さの秘密は何なのか? 

4年生(当時)として部を牽引してきた辻 晃と、リレー初優勝の立役者の一人である池嶋美佳に話を聞いた。





―― インタビューに際して、金沢大学オリエンテーリング部の過去10年ほどのインカレでのリレー入賞歴や、個人戦での上位結果 をざっと洗ってみました(漏れや間違いがあったらすみません)。

【2011年度】
ロング9位 辻晃
ミドル6位 北翔太、20位 辻晃
リレー 男子5位(北翔太 - 石坂翼樹 - 辻晃)、女子優勝(横山理恵 - 池嶋美佳 - 帖地藍)

【2010年度】
ミドル10位 辻晃

【2009年度】
リレー女子6位

【2008年度】
ロング14位 千保翼
ミドル15位 千保翼

【2006年度】
ミドル10位 小林美幸
リレー女子6位

【2004年度】
リレー男子5位

【2003年度】
ショート2位 大塚泰恵
リレー男子6位

【2002年度】
ショート8位 笹谷淳一
クラシック優勝タイム相当ながら電子カード反応なしで失格 笹谷淳一

【2000年度】
ショート3位 猪飼雅
クラシック6位 猪飼雅

リレーについて、今回男子は7年振りの入賞でした。女子は初優勝。しかも全員2年生と聞いてびっくりしました。今日はそのあたり の躍進の裏舞台を知りたいと思っています。

個人の名前を挙げさせてもらうと、2002年頃の笹谷選手の強さと、あのラス前コントロールで観衆の目の前でパンチしたものの、 電子記録が残っておらず、インカレ優勝から一転失格という悲劇は、強く印象に残っています。学年で僕(円井)の一つ下となる猪飼 選手も、4年間すべてのインカレで個人戦入賞を果たしており、やはり記憶に残っています。金沢大学は定期的に強い選手を輩出して いる伝統校のような印象があります。
大会やテレイン、競合校が少ない北陸という場所で、そのような強さを維持している秘訣にも興味があります。

そこで、この数年金沢大を引っ張ってきた辻君に話を聞きたいと思った次第です。
まず、辻君の部での立場、それから、オリエンテーリングを始めたきっかけ、これまでの経緯などを教えてもらえますか?


辻:
3年次はキャプテン(部長)でした。4年次はエース的立場 でした。2010年度(辻が3年生時)は天谷(翔吾)さんがコーチだったのですが、2011年度はコーチはおらず、僕が外で 得た情報を部内に伝えるという形でした。

オリエンテーリング部に入ったのは、中学高校と陸上部(専 門は400mなどの中距離)で走るのが好きだったことと、田舎育ち(富山県立山町の出身)でアウトドアが好きという理由が大 きいです。オリエンテーリング部は勧誘されたのでなく、自分で見つけて入部しました。

入部当初はそれほどやる気はありませんでした。転機は1年 生時のインカレリレーです。大学代表としてリレーを走らせてもらいましたが、大ミスをして、当時4年生だった千保さんに良い 形で繋げられなかった。その悔しさで、モチベーションに変化が生じました。

また3年生までロング(ディスタンス)など の個人戦に興味がありませんでした。しかし個人戦で戦える力をつけることがリレーにも繋がると考えるようになり、個人戦も大 事に考えるようになり、日常のトレーニングも変わりました。具体的にはロングを走れるだけのスタミナをつけるような練習も取 り入れていきました。



―― 部としての強化体制や、練習内容などを教えてください。

辻:
2011年度は特にコーチはいませんでした。ただ合宿では 天谷さん、片山(裕典)さん、丸山(小林)美幸さんなどのOBOGが協力してくれました。また今回のインカレでは、片山さん がオフィシャルを務めてくださいました。

大会や合宿を通じて、他大の友達ができたり、強い選手と知 り合ったりして、情報を得ることができました。特に4年生時は、松澤(俊行)さんと仲良くさせてもらい、色々教えていただき ました。

個人としての練習は、平日は1日8時間研究室にいて、それ 以外の時間でトレーニングをしました。部としては、2年生の女子3人が平日トレーニングを企画する担当で、ジョグ+地図読み などに取り組みました。練習の内容をどの(競技)レベルに合わせるか、というのは、低いレベルに合わせました。インカレ直前 の2-3月は、毎週末くらい遠征をし、大会に参加したり、合宿・練習会を行いました。



―― 辻君から見て、今回女子がリレーで優勝できたのはなぜだと思いますか?

辻:
入賞可能な実力はありましたが、まさか優勝できるとは思っ ていませんでした。運が良かったことも勝因の1つと思っています。



―― 今回のインカレでは、リレー女子優勝だけでなく、リレー男子5位入賞、ミドルで北君が6位入賞など大活躍でした。今年は例 年と何か違ったのでしょうか?

辻:
部の雰囲気は良かったです。春インカレが関西テレインとい うこともあり、関西のパークOシリーズにもよく行きました。僕が最終学年ということもあり、秋ぐらいから、必ず入賞しようと いう雰囲気があったように思います。



―― 金沢といえばテレインが少ない、大会が多い関東方面に遠い、冬は積雪など不利な状況にありますが、どう克服したのか教えて ください。

辻:
金沢の環境が不利とは思っていません。積雪は逆に良いと思 います、不整地を走るオリエンテーリング的に。また卯辰山トンネルなど、トンネル内を走ることもできます。



―― 辻君の月間走行距離や地図読み等のトレーニング内容を教えてもらえますか? 

辻:
年間ではインカレのロングとミドルが照準でした。4月の走 り込みは200q弱で、体力のベース作り。5月は坂を使ったインターバルを取り入れ、登坂、スピードのトレーニング。このよ うなサイクルを繰り返します。4年時の2-3月は忙しく、平日はトレーニングなしで、週末のみオリエンテーリングという形で した。地図読みは毎晩、1日1枚という内容。ノルコン(ノルウェーコンパス)による整置練習も行いました。



―― 最後に、今後のオリエンテーリングとの向き合い方、抱負を教えてください。

辻:
今後は(注:インタビューは2012年4月 1日)、ユニバセレ(ユニバーシアード日本代表選手選考 会)に参加予定。ただ3ヶ月くらい休憩したいとも思っています。今年度(2012年度)は僕がコーチを務める予定で、オリエ ンテーリングで後輩に負けないこと、後輩の目標になること、が目標です。

今後も出会う人とみな仲良くなりたいです。これまで、京都 大学・新潟大学の学生選手、松澤さんなど、出会った多くの人から色々教わり成長することができました。みんな、貴重な友人・ 知人で、これからも仲良く、がんばっていきたい。



―― ありがとうございました。続いて、女子リレー優勝について、より深く話を聞いてみたいと思います。オーダーは1走に横山理 恵、2走に池嶋美佳、3走に帖地藍という布陣でした。このあたり、3人の特長を辻君から教えてもらえますか。

辻:
横山はオリエンテーリングが上手く、大崩れしないタイプで す。池嶋は足が速い。元陸上部で、3000mを10:50程度で走ります。帖地は1年時のインカレWFクラスで優勝したこと もあり、山でのナビゲーションセンスがあり、勝負強い。走順は、オフィシャルの片山さんが決めました。



―― ありがとうございます。ここからは、その女子リレー初優勝の立役者の一人である池嶋美佳さんに話を聞いてみたいと思いま す。池嶋さんから見て、今回女子がリレーで優勝できたのはなぜだと思いますか?

池嶋:
他大学と違って、同じレベルの3人がいたことだと思います (と言っても実際は、他の2人の方が私よりオリエンテーリングが上手で速いのですが)。部内の女子の中でライバル意識があ り、切磋琢磨できたことが良かったと思います。



―― 先ほど辻君の話の中で、部の練習として、2年生(当時)の女子3人が平日トレーニングを企画する担当で、ジョグや地図読み などに取り組んだというのがありました。それは本当ですか?

池嶋:
はい。辻さんが他大学などからトレーニング方法の情報を 色々仕入れてくださり、アドバイスしてくださいました。そういった形で先輩方が練習内容を提案してくださり、読図会などを頻 繁に開きました。



―― 池嶋さんは陸上部出身で走るのが速いと紹介がありました。陸上競技の専門は何でしたか?

池嶋:
長距離です。クロスカントリー走が好きでした。



―― 辻君にも同じ質問をしましたが、北陸という土地柄、地理・気候などオリエンテーリングの環境的に恵まれていない部分もある と思いますが、その中で日本一になれたのはなぜでしょう?

池嶋:
冬場に練習できないのは割り切っています。外で走るのが厳 しければ、読図をします。また合宿などの遠征を大事にしています。平日なかなか練習できないけど、その分、週末の遠征で集中 力が上がります。



―― 若干2年生の3人でインカレリレーを優勝しました。今後の目標を教えてください。

池嶋:
インカレリレーでは、連覇をしてほしいです。僅差の勝利で はなく、余裕をもった勝利をしてほしいです。切磋琢磨し、仲間を信じ、金大を誇りに思いながらゴールしてほしいです。すべて 希望で言っているのは、私は今年のインカレは参加しないからです。同期の2人には申し訳ない気持ちです。でも私を信じ走って くれた2人は私の常に目標であり、応援しています。(注:池嶋さんはインカレの時期に短期留学の予定)



―― 同じ金沢に住みトレーニングする身として、金沢大学の活躍は刺激であり、励みになります。今後のさらなる活躍を楽しみにし ています。本日は貴重な話が聞けました。ありがとうございました。


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