公開討論(後半)


(フロアを含めたオープンミーティング)



中高生の強化環境

松澤:
フロアも交えての時間にしたい。まず私から伺いたいのは、先ほど橋本先生から中高生の環境について強化をいただいたが、東海高校の大野先生にも中高生がオ リエンティアをしていく上で日本の環境はどうか、というところを評価、ご感想をいただきたい。

大野: 
まず実際の話、中高生のオリエンティアはざっと100人くらいしかいないかと思う。
明日の選考会に向けて、8月のJWOC(ジュニアオリエンテーリング選手権)の選考基準ということで3000m10分(男子)という明確なものを出してい ただいて、東海の場合はこの3ヶ月、それを頭において今回4人来た。(1週間、2週間で結果を感じさせるのは難しいが)3ヶ月くらいの短期で目標を掲げて 取り組むのは、中高生はできるかな、というのをこの10年やって感じている。実際に今回も3000mで1〜2分のスピードアップをしてきた。学校の1学 期、2学期というサイクルにちょうど合った目標を持っていくのはやりやすい。
先ほどあったように代表レベル、世界とかの目標を持たずに、偶然、世界ジュニア選手権に選手を出していたところもある。これからは今日聞いた話が目標の1 つずつになって、うちの学校だけじゃなくて、100人でも200人でも日本中の中高生がそういうものを目指していくことは十分やれるんじゃないかと。この 3ヶ月でもすごく実感した。こういう場で目標になることを聞いたり、実際に数字を聞いたりするのはすごく大事だなと実感する。

松澤: 
最近は東海高校を卒業して大学でもやっている大野選手の教え子も目立つようになってきた。高校時代はインターハイという目標があるが、大学で新しい目標を 見つけるときにどう取り組んでいくのか。残念ながらそれが見つけられなかった事例など、感じることがあればお願いします。

大野: 
東海のオリエンテーリング部は発足して11年、12年で、OBの大学4年生までそろったところ。僕が感じているのは、高校3年までやれた子は何らかのかた ちで大学でもやれている。一番の動機は、上を目指すというより、今は後輩のことを考えてくれているところ。後ろにつないでくれるというか、自分のことより も、後輩のことを考えてやりだしてくれている、というのも大きかった。僕がそういうのを、中1くらいの頃からよく言うので。「また学校に来てOBとして やってほしい」と。それが社会人になってようやく、いろんな形でできるのかなと思う。彼らが自分の道をどう描いていくかというのは、なかなか、JWOCの 先にはまだ……僕も与えられていないし。とりあえず今は、後輩に姿を見せてくれるということでやれているところがあるのかなと感じている。




日本代表チームの目指すところ

円井: 
シンポジウムのタイトルに「日本代表の未来について考える」とある。先ほど、目標がチームとしてないとか、目標によってトレーニングが変わるという話が あった。日本代表チームは今後、どうした目標を持っていけばいいかというのを、各パネリストの皆さんに聞きたい。

藤沼: 
2005年が一つの大きな目標で、2005年が2002年くらいから何年もかけて準備した結果だと思う。今、1年ごとに目標を定めていると思うが、それで うまくいっていないということは、2年とか3年とかのスパンで目標を立ててやっていった方がいいのではないかと。たとえばサッカーのワールドカップが毎年 行われていたら、日本は浮き沈みもあると思うが、4年にあわせて長期的に取り組むことでうまくいっているところはあると思う。

番場: 
私も数年単位というか、まず目標としては、世界選手権でチーム全員が予選を通過することができていないので、近々の目標としてそういうものを定めることが 今の日本チームにとって現実的だと思う。その近々の目標を何年先に設定するか考えたときに、世界選手権のテレインも考慮するべきで、正直、対応できない国 はあると思う。日本選手はそんなに長く現地で調整できるわけではないので。(この先3、4年の世界選手権が決まっているので)結果が出せそうなところに注 力して、毎年そこにトレキャンに行くという過程を経て結果を出す、と。短期的に見たときの目標設定としては良いんじゃないかと思う。
それだけだと夢が見られないという意見もあると思うので、今、ジュニアで足の速い人たちを10年後のこの大会を目標にして育てる、という長いスパンでの目 標を立てることも一つだと思う。

松澤: 
今、世界選手権の話が出たが、番場選手はアジア選手権で、個人3種目で優勝している。アジア選手権は、日本のOL界はどう位置づけていくべきだと思うか?

番場: 
(位置づけとしては)高いものにするべきだと思う。ただ、もし中国勢が本気で来た場合、アジア選手権で勝ち続けるという目標は、世界選手権で上位入賞する という目標とイコールになる可能性がある。もし、あの中国に本気で戦い続けるようになるチームを育てる意味になるとすれば、もう少し別の策が必要になって くると思う。

円井: 
日本オリエンテーリング界の未来として、僕自身は、オリエンテーリングをもっとメジャーにしたいと思っている。夢は大きく、いつか世界チャンピオンを出す というくらいを目指して取り組むのを視野に入れて。たとえば20年後、10年後、5年後という長期的な視野で。夢を大きく持ってほしい。

小泉: 
選手個人の気持ちとしては予選を通過したい、と思っている。私自身、世界チャンピオンになりたいと思っているが、年齢的にも厳しいかなと。ただ、私が携 わった将来、誰かが世界チャンピオンになってほしいという夢はある。
ただ、このシンポジウムの根本から崩す話になってしまうが、そもそも今の日本が強化に取り組むべきかどうかというところも、JOAとしては考えないといけ ないところだと思う。大学生オリエンティアの数が減っていると見られる中で、確実に愛好家も減っているし、この先、先細りする中で、JOAとしては強化し ている暇があるのかと。そこも考えないといけないと思う。
先ほどの世界選手権の予選通過という目標にしても、アジア選手権で勝つという目標にしても、(個人としてはライバルに勝つ、という闘争心の達成にはなる が)国、協会としてその目標を達成したからって何になるの?、と。「勝ったから嬉しい」で終わらせるわけにはいかないはず。たとえば、優勝したという事実 をもとにマスメディアに流して、普及につなげる、この業界を活性化させるといった大きな視点での政策がやはり必要になってくると思う。

松澤: 
長い間、日本チームの浮き沈みを見ている鹿島田さんはいかがですか?

鹿島田: 
小泉君が言ったことに近い感覚を持っている。20年後の目標をつくるのは、日本のオリエンテーリング界で強化とはまた違うものだと思っている。直近で今あ る代表チームが世界選手権で予選通過するというステップ、短期的な目標は、強化委員が取り組む強化活動だが、もう少し長い目で見れば、それはまた違った組 織、取り組みとなるだろう。ピラミッドの上だけ引っ張るのではなく、もっと裾野が広がった上で、とイメージを持っている。そういう意味での(裾野を広げ る)策がオリエンテーリング界全体になければ、なかなか難しいと思う。20年後を考える大きな皿という意味で、今日があるのかなという思いでいる。




大学クラブでの新人勧誘と強化

番場: 
日本のオリエンテーリングを支えているのは、愛好家を含め、大学のオリエンテーリング界だと思う。大学オリエンテーリング界が先細りする中、東北大学は毎 年、すごい選手をしっかり入部させている。その新人勧誘の秘訣、どういったことをPRすることによって強い選手がそれだけ入るのか、東北大の方にお聞きし たい。
オリエンテーリング部に誘うときに、競技色を出してしまうと、新入部員がやめてしまうという話もよくある。どうやって強くさせているのか?

日下:
新人勧誘については、実はよく分かっていないが、競技的な部分も出していると思う。
強化の部分は、トレーニングに関しても強制しているわけではないので、部の雰囲気ということになるかもしれない。藤沼さんも言っていたように、地方の大学 は練習環境があまり良くない。大会になるとレンタカーで移動したりしてハードな環境でやっているので、そこで(環境に恵まれている)関東に負けたくないと 思ったりして強くなっていくのかなと。

番場: 
京都大学は昔と比べるとどんどん数が減ってきてしまって、競技色を前面に出さないほうがいいという風潮が流れる時期もあった。そうすると競技オリエンテー リングとしては細くなってしまうという意識があったので、どうすればそこを両立できるのかなと。

松澤: 
藤沼選手は先ほど、個人的な取り組みでフィジカルを強くするために一生懸命練習をしたという話があった。それは部の雰囲気として共通するものはあったの か?

藤沼: 
全くなかった。僕だけ浮いていた(笑)。1人で黙々と走っていて「何やってるんだろう、あの人」という存在だった。飲み会でコミュニケーションをしつつ、 何とか部にはいたが(笑)。
東北大の普及を同期に聞いたことがあって、たとえば「インカレ、優勝」「インカレ、入賞者○人」というのを、新勧のときにアピールして、陸上やってたよう な人を積極的に引き入れたというのを聞いたことがある。

松澤: 
私が東北大学にいた時代は相当前だが(笑)、新人勧誘で競技実績をアピールしていたというのはそのとおり。学校公認の運動部だったので、運動部の情報をま とめた冊子だったり、校舎の前で、1日5クラブずつPRする時間があって、そういうときにも出してもらえる。そこでも部の実績を打ち出し、目標の大会を打 ち出していた。その点については伝統というか続いているのではないかと思う。





普及、広報

小泉: 
オリエンテーリングは、私たちよりも上の世代は、番場さんも言ったように「地図を使って誰にでもできる知的なスポーツ」というレクリエーション的な要素を 含めたスポーツという意識があると思う。私の大学でもそうだったが、最初はみんなで遊ぶものだと誘われたのがインカレに連れていかれて、やめてしまう人が いれば、私たちのように「面白い」と残る選手もいる。昔は大学に入ればサークルに入るのが普通で、たくさん入れて半分やめても残る人も多いからOKだっ た。最近は、サークルに入る人も減ってきている現状がある。その中で、オリエンテーリングの普及の仕方、強化のための人材確保という意味でも、今のやり方 でいいのかというのがある。
オリエンテーリングは、実際は道なき道を進むハードなスポーツ。それを最初から前面に押し出していけば、学生のみならず社会人でスポーツ経験がある人を もっと取り込むとかできるのではないか。トレイルランニングは今すごく盛んだが、学生でやっている人はあまりいないと思う。社会人になって30歳前後で やっている人が多いというのは、昔スポーツをやっていて、新しいことをやってみようという挑戦心も煽っているんじゃないかと思う。
あとは、結果の捉え方という意味でも、マスメディアにもっと積極的にPRするべきじゃないかと思う。たとえ世界選手権で予選落ちでも、ターザンとかアドベ ンチャースポーツマガジンとか、いろんな雑誌があるので、そういうのに取り上げてもらっていろんな人に知ってもらう取り組みは、人材を確保する意味でも必 要だと思う。
たとえば、私は今、国内で3連勝している(笑)。ローカルな大会で3回勝っても皆さんは意味ないと思うかもしれないが、私がブログで「3連勝しました」と 書くと、会社の人などに「小泉さん、また勝ったんだ、すごいね」と見てくれる。オリエンテーリングの選手はアスリートなんだというPRになる。自分たちを 売り出していくというのは、このスポーツが残っていくためにも強くするためにも必要だと、常々感じている。

円井: 
今の話に関連して、たとえばトレイルランニングで普及に成功した要因の一つとして、ある有名なカリスマランナーがいるのだが、彼は、どこのレースに行くと いう情報を、過去に取材を受けたメディアなどにどんどん発信していると聞く。そうすることによって、マスメディアや雑誌社も「あ、そうなんだ、面白そう」 と取り上げるようになる。そういった選手側、もしくはJOAといった組織側が、こまめに外に発信していくことは大事かなと思う。
オリエンテーリングは内輪で楽しんでいる側面が強いので、今後はそれをいかに外に向けて発信できるか。そういうところで普及につなげて、ピラミッドの底辺 を広げる活動をしていけばいいかなと思う。

松澤: 
番場選手や紺野選手は、地元の有力新聞に載っているようだが、いかがですか。

紺野: 
私は福島民報というローカルな新聞に記事が載った。地元の知人などから連絡がきたり、反響はあった。PRにはなっている。高校時代は陸上部だったが、同級 生が大学に入って自分がオリエンテーリングをやっているのを知って「自分もやってみようかな」という声も出たりする。あんな記事でも反響はあるので、どこ かで誰かが見たり、友達が始めるきっかけにもなるかもしれないと思う。

松澤: 
栃木県の有力紙に載った渡辺円香さんはいかがですか。

渡辺: 
下野新聞というローカルな新聞に載った。やはり反響はあった。知り合い、親戚関係、いろいろ。職場に持っていったら、上の方からも応援メッセージをもらっ た。やはりそういうのは有効だと思う。今日皆さんの話を聞いていて、世界大会が終わった後に一言、報告を入れればよかったなと。今後、生かせればいいかな と思う。

松澤: 
橋本先生は部員数確保のためにPRなど何かしていることはあるか。

橋本: 
4月とかに勧誘期間があり、そういうときは生徒だけでなく父兄も学校に来るので、部員を使いながらビラを配ったりPRはしている。クラブとしてやっている と、自然と「そういうスポーツがあるんだ」と認識される部分がある。学校の部活動としてやるとかなり発展すると思う。たとえば小学校とか、何かしらのかた ちでスプリントレースとかも出てきている。

松澤: 
先ほども話に出たスポーツとしてやるのか、レクリエーションなど別の側面で考えているのかは、いかがでしょうか。

橋本: 
やはり、そもそもオリエンテーリングがスポーツとして認知されていない。何をしているかわからないけど、スタンプラリーのようなイメージで「自分にもでき そうかな」と入ってくる子が多い。だから「バリバリ運動したい」という子はなかなか入ってこない。僕が思うのは、オリエンテーリングをレクリエーションと いうことでもそれはそれでいいが、競技として普及することが最終的に強化につながると思う。

池: 
9月に運営した中日東海オリエンテーリング大会の中で、トレイルランの要素の強いクラスを作って、オリエンテーリングの普及も兼ねてやった。円井さんはト レイルランの大会に出られて選手とも交流があるが、トレイルランナーの若手の実力者にオリエンテーリングを紹介して興味を持ってもらい、実力を伸ばしても らってオリエンテーリングの強化につなげるというアプローチもあるのでは?

円井: 
多摩OLでもランナー向けのクラスを用意していて、アンケート等でも好意的な意見も多い。しかしながら、僕の印象としては、ランナーがオリエンテーリング をやっても、あまりリピーターとして後に続かないかなと感じている。
トレイルランニングが強い選手で、オリエンテーリングに興味を示したり、本気で取り組もうという人は残念ながらあまりいない。地図読みがネックになってい るところもある。最初の1、2年は足が速いのに負け続けるという経験も出てくる。2003年頃に、2005年の世界選手権に向けて、宮川さんが、鏑木さん や自衛隊の選手にオリエンテーリングへの転向を促した取り組みをした例がある。鏑木さんも「2〜3年で(世界に通用する)ナビゲーションを覚えるのは無 理」とオリエンテーリングには取り組まなかったという例がある。やはり1度社会人になってトレイルランニングで上位に入っている選手をオリエンテーリング に持ってくるというのは厳しいかなと感じている。
僕が考えているのは、もう少し早い段階で、中学や高校の陸上部、山岳部の選手を持ってくるというもの。ポテンシャルの高い若い選手を強豪オリエンテーリン グ部のある大学で鍛えてもらって、世界選手権につなげるという道がいいかなと思っている。
もちろん、マラソンやトレイルランニングは今ブームなので、そういう選手をロゲインに持ってくる道もある。ロゲインだと、皆さん、すごく楽しいと言う。そ こから地図読みに興味を持ってもらって、そこからオリエンテーリングに入ってもらう。さらに、彼らの知り合いや子どもがオリエンテーリングに興味を持って もらえるかもしれない。そういう道筋はあるかなと思う。





最後に、パネリストから一言

藤沼: 
今日も話に出たスプリントは、見せる要素が強いので、メディアや初心者に訴える意味でももっと活用していった方がいいと思う。全日本スプリントやインカレ スプリントなど、スプリントに力を入れていくというのは賛成できる。

番場: 
私も先ほどのメディアに見せるという観点から、スプリントは重要だと思う。あとは写真など、わかりやすくかっこよく見えるようなものが重要かなと最近は思 う。私は会社に支援をいただいており、報告の義務がある。定期的に社内報に写真を載せないといけないが、なかなかかっこいい写真がない。被写体の問題も大 きいと思うが(笑)。トレイルランだとゴールのときは楽しそうにゴールするので、かっこよく見える。オリエンテーリング中の写真では往々にして苦しい表情 で、良い写真を探すのが大変。
このスポーツはかっこいいんだよとPRすることがすごく難しい。PRという観点でいうと、さわやかにかっこよく写真に写ることも大事だと思う。そういうこ とも含めて、もっとうまく見せられるように、トレイルランのように、みんなが「やりたい」と思えるような雰囲気をかもし出せるような、大会なり業界になっ ていけばいいなと思う。そのためには皆さんの笑顔、およびイケメン君とかの活躍が期待されて、やっている人たちが全体として良い雰囲気になっていくことが 重要かなと思う。

円井: 
言い忘れたこととして、お金の問題があると思う。やはり強化とか普及、広報において、資金なり人材、リソースの問題があると思う。それをどう確保するかと いう問題と、どう分配するのか。そういうことも今後、議論していった方がいいと思う。たとえばJOAの資金の使い道を皆で考えるとか、企業の支援を集める とか。2005年の日本開催の世界選手権に向けても資金集めはやったと思うが、その反省を踏まえて今後、発展していくためには、どうリソースを集めていく かというところでも議論を深めていければと思う。

橋本: 
個人的には、今後も「楽しく」活動していけたらいいなと思う。今までも、生徒に指導するというよりは、自分も楽しんで生徒も一緒に楽しもうというスタンス でやってきている。それで生徒もついてきて普及にもつながっていると思うので、今後もそのスタイルでやっていきたい。
ただ、強化委員の立場としては今日、耳の痛い話もあった。それらを参考にして、今後、どうすれば世界に通じるかというのを含めて、普及、若年層に対してど うアプローチしていくか考えていきたい。

小泉: 
特に若い人に聞いて欲しいと思っていたことが3つある。1つは、さっきも話に出した「無鉄砲さ、無謀さ」。失敗を恐れない気持ちというのは大事。せっかく あるチャンスを逃さないで欲しい。もう1つは、メディアへの売り方、PRの仕方について、もっと傲慢さを出すこと。オリエンティアは営業タイプが少ないと 思うが、もっと自分を売り込むんだという姿勢は絶対に必要だと思う。
明日のスプリント選手権、私はいろいろな理由で出場しないのだが、人への見せ方という意味では、これは決して運営に手を挙げたクラブへの批判というわけで はないと断った上であえて言えば、スプリントというのはそもそもマスメディアに売るために始まった種目のはずが、なぜ最初のスプリント選手権を人気の少な い山奥でやるのか、と。たとえば、代々木公園でやることも可能だったはず。そこにもっといろんな人に来てもらって、オリエンテーリングを見てもらう必要が あると思う。代々木公園だと競技の公平性に関わるとか問題はあると思うが、そのへんはある程度犠牲にしてでも売りつけるという「がめつさ」は全体にも必要 だと思う。
最後に、円井さんからお金の話が出たが、たとえば、個人的に海外遠征に行きたいけど、お金がないからいけない、というのはナンセンスだと思う。たとえば、 ある会社の社長に土下座してでも「行かせてください」と言うとか、その人の心意気が通じれば援助を出してもらえるかもしれない。オリエンティアはそういう 意味では賢すぎるし、傲慢さが足りないし、人に頼ることも足りないなと。私自身もそうだったが、「本当に成功してやるんだ」という気持ちが、全体的に足り ないんじゃないかと思う。
特に若い選手に向けて、最初に「Yes we can!」と言ったが、「絶対にできるんだ」という気持ちがあれば、道は開けると思う。世界チャンピオンに なるという夢も決して夢ではないので、追いかけてもらいたい。

(おわり)


===
1.シンポジ ウム概要・パネリスト紹介
2.基調講演 「世界における日本の位置」
3.公開討論 (前半)
4.公開討論(後半)
(編集:円井基史、協力:JOA強化委員会、松田珠子)
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